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(IDWR 2002年第31号掲載) クリミア・コンゴ出血熱(Crimean‐Congo Hemorrhagic Fever :CCHF)は、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスによる急性熱性疾患であり、エボラ出血熱、マールブルグ出血熱、ラッサ熱とともにウイルス性出血熱 (Viral Hemorrhagic Fever :VHF)4 疾患のひとつである。この疾患はダニ(Hyalomma 属)が媒介する。上記4 疾患の中ではラッサ熱についで多く、アフリ...エボラ出血熱はエボラウイルスによる感染症であり、ラッサ熱、マールブルグ病、クリミア・コンゴ出血熱等とともに、ウイルス性出血熱(viral hemorrhagic fever:VHF)に分類される一疾患である。エボラ出血熱患者が必ずしも出血症状を呈するわけではないことから、国際的にエボラ出血熱に代わってエボラウイルス病(Ebola virus disease: EVD)と呼称されている。以後、EVDと略する。たとえば、ザイール株細胞培養(Vero 細胞)で増殖すると細胞が変性・壊死するのに対して,スーダン株感染細胞はあまり強い変性を示さない。また、in vivo でもマウス、サル類での病原性は異なる。ザイール株はスーダン株よりも強い病原性を示し、速やかに死に至らしめる。病原体は他のVHF ウイルスと同様にBSL-4病原体に分類されており、ウイルス増殖を伴う作業は最高度安全実験施設(BSL-4施設)でなされる必要がある。フィリピンでカニクイサルが発症したときの原因であるレストン株は、ヒトへの病原性はないとされるが、その結論を得るにはさらなる研究が必要である。血液、咽頭拭い液、尿がウイルス学的検査材料である。ウイルスゲノムのRT-PCRもしくはリアルタイムRT-PCRによる検出法、ウイルス抗原検出ELISAによる検出法がある。抗体検出法としてIgG-ELISA、IgM-捕捉ELISA、間接蛍光抗体法がある。血液、体液等からウイルスを分離する検査法も重要な検査法であるが、通常1週間以上を要する。国立感染症研究所ウイルス第一部第一室(村山庁舎)がEVDを含むウイルス性出血熱の検査を担当している。次のいずれかが満たされた場合、「エボラウイルス病(EVD)」とする。現時点で承認されたワクチンや治療薬はないが、DRCにおける集団発生を受けて、研究段階にあるいくつかの薬剤がヒトへ投与されている。ワクチンはFDA未承認のrVSV-ZEBOVを感染拡大予防のために使用され、治療薬はZmapp、Remdesivir、REGN、mAb114、Favipiravirが使用されている。現時点では、科学的に治療効果が証明されている薬剤はなく対症療法が基本となり、特に輸液管理が重要である。EVDを引き起こすエボラウイルスには5つの亜属(ザイール、スーダン,ブンディブギョ、タイフォレスト、レストン)が存在し,レストンエボラウイルス以外はサハラ砂漠以南の熱帯雨林地域で発生したEVD流行の原因となっている。5つの種の中でザイールエボラウイルスは最も強い病原性を示す。2014年に西アフリカで発生しているエボラウイルスについては、ギニアで発生した流行時のエボラウイルスの遺伝子情報から系統樹解析が行われている(Dudas and Rambaut, PLoS CURRENTS OUTBREAKS, May 2, 2014. 2014年頃に世界的な流行の兆しを見せ始め、一部地域ではwhoが緊急事態宣言をするなど、世界中が注目し、震撼したエボラウイルス病。 この非常に危険な感染症は今現在もなお、流行を繰り返している。 今回は、エボラウイルス病とはどういう病気なのか学んでいこう。 Phylogenetic analysis of Guinea 2014 EBOV ebolavirus outbreak)。それによると、このウイルスはアフリカ中央部のコンゴ民主共和国・コンゴ共和国・ガボンで発生した流行時に原因となったザイールエボラウイルスに分類されたが、異なるアフリカ中央部で発生したザイールエボラウイルスとは異なるグループ(クラスター)を形成することが明らかにされた。この結果は西アフリカで発生したEVD流行は、アフリカ中央部に由来するウイルスによる可能性、または、そもそも西アフリカに存在していたザイールエボラウイルスに分類されるウイルスによる可能性を示唆する。EVDの公衆衛生学上の重要な特徴は、致命率が高いこと、血液や体液との接触によりヒトからヒトへ感染すること、条件が整うと比較的大きな流行に発展することがあることである。そのため、EVDの流行は、しばしば注目を浴びてきた。2018年5月にコンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo:DRC)北西部の赤道州において同国9回目の集団発生があり、54例(死亡33例)が報告され7月に終息した。しかし、同年8月に北東部の北キブ州において同国10回目の新たな流行が発生し、2019年3月現在も続いており長期化している。なお、WHOは本流行の発生を受けて、2018年10月17日に国際保健規則(IHR)緊急委員会を開催したが、現時点では本流行は国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern:PHEIC)には該当しないと結論づけられた。一方で、WHOは引き続きEVD患者発生状況に対して懸念を示し、対応の強化や継続的な警戒が必要であることを指摘している。日本では国立感染症研究所村山庁舎にグローブボックス式BSL-4施設が1981年に設置され、BSL-3施設として使用されてきたが、平成27年8月からBSL-4施設として使用されている。世界的にはBSL-4施設は30カ所以上で設置されている。アフリカではガボン及び南アフリカ共和国にBSL-4施設がある。発症前のEVD感染者は感染源になることはほとんどない。EVD患者またはエボラウイルス感染動物の血液などの体液と直接接触した場合に感染する。ヒトへの感染の発端が、アフリカでは熱帯雨林の中で発見された、感染して発症または死亡した野生動物(チンパンジー、ゴリラ、オオコウモリ、サル、レイヨウ、ヤマアラシなど)をヒトが触れたことによると示唆される事例が報告されている。EVDを発症した患者の体液(血液、唾液、分泌物等)に、直接的接触することにより、またはそのような体液で汚染された環境への間接的接触で創傷のある皮膚や粘膜を介してヒト-ヒト感染が起こる。免疫応答や炎症反応などが起こりにくい、いわゆる免疫回避組織である、精巣、眼球内部、中枢神経系において、EVDの回復後にもウイルスが存在し続けることがある。発症3か月後の男性精液からRT-PCR法でエボラウイルスが検出された事例がある。EVD感染後の性行為は発症後12か月まで又はRT-PCR法で2回陰性の結果が得られるまで、コンドームを装着することが推奨されている。またEVD治療9か月後にエボラウイルスが原因で遅発性の急性脳髄膜炎を発症した症例も報告されている。EVD流行では地域で行われていた葬式の風習も(会葬者が遺体に直接触ること)、EVDの地域伝播に寄与する。接触感染予防対策が適切になされないこと、適切に実施できない環境にあることが、医療従事者のエボラウイルス感染リスクとなる。エボラウイルスに感染しないようにするためには、流行地域に行かない(そのための情報をあらかじめ収集する)、野生動物に直接触れない、その肉を生で食さないことが重要である。流行地では患者(感染者)の体液(排泄物を含む)や、患者が触れた可能性のある物品に触れないようにすることが重要である。(2019年03月27日改訂)エボラ出血熱はエボラウイルスによる感染症であり、ラッサ熱、マールブルグ病、クリミア・コンゴ出血熱等とともに、ウイルス性出血熱(viral hemorrhagic fever:VHF)に分類される一疾患である。エボラ出血熱患者が必ずしも出血症状を呈するわけではないことから、国際的にエボラ出血熱に代わってエボラウイルス病(Ebola virus disease: EVD)と呼称され...Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japanラッサ熱は西アフリカ一帯にみられる急性ウイルス感染症であり、いわゆるウイルス性出血熱4疾患の一つである。“ラッサ”とは1969年に最初の 患者が発生した村の名に由来する。ラッサウイルス(Lassa virus)はアレナウイルス科に属し、自然宿主は西アフリカ一帯に生息する野ネズミの一種であるマストミス(Mastomys natalensis) である。1967年8月西ドイツ(当時)のマールブルグ(Marburg )とフランクフルト、およびユーゴスラビアのベオグラードでポリオワクチン製造および実験用としてウガンダから輸入されたアフリカミドリザルの解剖を行っ たり、腎や血液に接触した研究職員、および片づけを行った人など合わせて25 名に突如熱性疾患が発生し、7名が死亡した。 エボラ出血熱は感染症法では「一類感染症(感染力、罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性が極めて高い感染症)」に定められている。このため診療体制が整えられた第一種感染症指定医療機関に入院し検査・治療を受けることになる。アウトブレイクが発生している場合には、渡航先、現地での行動に基づく疑い患者の定義(擬似症定義)が通達され、該当する人は決められた期間、毎日体温を測定し検疫所に報告しなければならない。発熱や症状が見られた場合には、報告を受けた検疫所が保健所に連絡し、第一種感染症指定医療機関へ擬似症患者を搬送する。 症状のある患者自身がエボラ出血熱を心配した場合、あるいは患者を診察した一般の医療機関がエボラ出血熱を疑った場合には保健所に連絡し対応について指示を仰ぐことが重要。 診断は血液や尿、咽頭を拭った液を国立感染症研究所へ運び、病原体の分離や遺伝子の検出、血液の抗体検査により行う。診断の時だけではなく、回復した後も同様の検査によって患者の体液中に感染性ウイルスが存在しないことを確認することが求められる。患者の退院のための大きな判断材料となるからだ。また、退院後も患者の家族や接触者に対する追跡調査が行われ、感染拡大防止に役立てている。有効なワクチンや治療薬がないため、予防に注力する。流行状況を調べ流行地には行かないこと、やむなく渡航する場合は感染が疑われる人間や死亡した人間、葬儀への参列、医療機関の受診などは極力避けることが必要。動物(霊長類、ヤマアラシ、宿主であるフルーツコウモリなど)からも感染するので、動物の死体に近づくことや接触、その肉を生で食べることも同様に避けたい。発症していない人間が他者に感染させることは、性行為など特別な場合を除いてほとんどないので、過剰な懸念を抱く必要はない。エボラ出血熱は、エボラウイルスによる感染症。致死率の高さが特徴で、20%から最大で90%に達することもあり、感染地域の住民に多大な恐怖を与えている。病気を起こすウイルスの亜属は5種知られており、種類によって致死率が異なるのが特徴だ。この感染症は、1976年に初めて現在の南スーダンとコンゴ民主共和国で同時に発生した。近年では2014年以降、西アフリカ(ギニア・シエラレオネ・リベリア)で感染が拡大し、アフリカ以外でもスペインやアメリカなどで発生が確認された。その後2015年5月にリベリア、11月にシエラレオネ、12月にギニアでエボラ出血熱の終息宣言が発表された。2018年7月コンゴ民主共和国北キブ州においてアウトブレイクが発生し、2019年9月時点も続いている。回復期のリハビリテーションに関する情報をご紹介する「回復期リハビリテーション.net」現在のところ、エボラウイルスに対する効果的なワクチンや有効な治療薬は確立していないので、治療は対処療法のみに限られる。下痢で脱水症状などを起こしている患者への点滴や、併発感染症を防ぐための抗菌剤、また、ビタミン剤や鎮痛剤、栄養治療食などを与えることで少しでも長く患者の小康状態を保ち、患者自身が免疫力をアップさせ回復をめざすのが治療の基本だ。患者の体内からエボラウイルスに対する抗体が検出されるようになると急速に病状は回復し、免疫も機能し始めるが、それが一生続くかどうかはまだ不明。なお、これまでにも数多くエボラウイルスの増殖を抑制するための抗ウイルス薬の開発が進められてきたが、現時点ではまだ一つもエボラウイルスに対して有効性が証明されたものはなく、一部の薬品を除いては臨床の段階にも達していないのが現状だ。1996年、宮崎医科大学卒業。宮崎医科大学寄生虫学教室、墨東病院感染症科、奈良県立医科大学病原体・感染防御医学/感染症センターにて基礎医学・臨床の両面から感染症に携わる。2016年4月より現職。日本内科学会総合内科専門医、日本感染症学会感染症専門医の資格を持つ。全国の病院・総合病院・大病院を独自取材をもとにご紹介する医療情報サイト「ホスピタルズ・ファイル」動物病院や獣医師を独自取材をもとにご紹介する動物病院情報サイト「動物病院ドクターズ・ファイル」看護師・歯科衛生士・受付スタッフなど医療従事者向け求人情報サイト「ドクターズ・ファイル ジョブズ」2~21日(通常は7~10日)の潜伏期を経て、感染の第一期では高熱、頭痛、筋肉痛、咽喉炎、全身の衰弱などが見られる。第二期では、嘔吐、下痢、発疹、多臓器不全が確認される。また、半数以下のケースでは吐血や血性の下痢、皮下出血など、複数の臓器で出血症状が見られることもある。加えて、肝機能や腎機能の低下も見られる。結膜が充血するなど目の症状が出た場合は、他の症状と合わせて検討されエボラ出血熱の早期診断に役立つ場合もある。なお、感染した経緯によって潜伏期間の長短にも違いが出る場合がある。汚染された注射器を通した感染は潜伏期間が短く、接触による感染は潜伏期間が比較的長くなる傾向にあるという。エボラウイルスの自然宿主は、オオコウモリ科のフルーツコウモリと考えられているが、宿主や感染動物(ゴリラ、チンパンジー、サル、ヤマアラシなど)の血液や分泌物、臓器、その他の体液などと人間が接触することにより、ウイルスは人間社会に持ち込まれる。その後、ウイルスに感染した人の血液や分泌液、体液、臓器、そしてこれらに汚染された物体(ベッドや衣類など)に皮膚の傷や粘膜を通して直接接触することで人から人に感染が拡大していく。他にも「葬儀で感染者の体に直接触る」、「感染予防対策を徹底せずに医療従事者が患者と濃厚接触する」などの行為も感染拡大の大きな要因となっている。また、性行為による感染リスクについては、現在も調査が進められているところだが、WHO(世界保健機構)は、エボラ出血熱からの回復者やそのパートナーに対し「性行為の一切を控える」ことや「回復者の精液が2度の検査で陰性になるまでは、一貫してコンドームを使用し安全な性生活を送る」ことなどを呼びかけている。
2014年に西アフリカで発生しているエボラウイルスについては、ギニアで発生した流行時のエボラウイルスの遺伝子情報から系統樹解析が行われている(Dudas and Rambaut, PLoS CURRENTS OUTBREAKS, May 2, 2014.
(IDWR 2002年第31号掲載) クリミア・コンゴ出血熱(Crimean‐Congo Hemorrhagic Fever :CCHF)は、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスによる急性熱性疾患であり、エボラ出血熱、マールブルグ出血熱、ラッサ熱とともにウイルス性出血熱 (Viral Hemorrhagic Fever :VHF)4 疾患のひとつである。この疾患はダニ(Hyalomma 属)が媒介する。上記4 疾患の中ではラッサ熱についで多く、アフリ...エボラ出血熱はエボラウイルスによる感染症であり、ラッサ熱、マールブルグ病、クリミア・コンゴ出血熱等とともに、ウイルス性出血熱(viral hemorrhagic fever:VHF)に分類される一疾患である。エボラ出血熱患者が必ずしも出血症状を呈するわけではないことから、国際的にエボラ出血熱に代わってエボラウイルス病(Ebola virus disease: EVD)と呼称されている。以後、EVDと略する。たとえば、ザイール株細胞培養(Vero 細胞)で増殖すると細胞が変性・壊死するのに対して,スーダン株感染細胞はあまり強い変性を示さない。また、in vivo でもマウス、サル類での病原性は異なる。ザイール株はスーダン株よりも強い病原性を示し、速やかに死に至らしめる。病原体は他のVHF ウイルスと同様にBSL-4病原体に分類されており、ウイルス増殖を伴う作業は最高度安全実験施設(BSL-4施設)でなされる必要がある。フィリピンでカニクイサルが発症したときの原因であるレストン株は、ヒトへの病原性はないとされるが、その結論を得るにはさらなる研究が必要である。血液、咽頭拭い液、尿がウイルス学的検査材料である。ウイルスゲノムのRT-PCRもしくはリアルタイムRT-PCRによる検出法、ウイルス抗原検出ELISAによる検出法がある。抗体検出法としてIgG-ELISA、IgM-捕捉ELISA、間接蛍光抗体法がある。血液、体液等からウイルスを分離する検査法も重要な検査法であるが、通常1週間以上を要する。国立感染症研究所ウイルス第一部第一室(村山庁舎)がEVDを含むウイルス性出血熱の検査を担当している。次のいずれかが満たされた場合、「エボラウイルス病(EVD)」とする。現時点で承認されたワクチンや治療薬はないが、DRCにおける集団発生を受けて、研究段階にあるいくつかの薬剤がヒトへ投与されている。ワクチンはFDA未承認のrVSV-ZEBOVを感染拡大予防のために使用され、治療薬はZmapp、Remdesivir、REGN、mAb114、Favipiravirが使用されている。現時点では、科学的に治療効果が証明されている薬剤はなく対症療法が基本となり、特に輸液管理が重要である。EVDを引き起こすエボラウイルスには5つの亜属(ザイール、スーダン,ブンディブギョ、タイフォレスト、レストン)が存在し,レストンエボラウイルス以外はサハラ砂漠以南の熱帯雨林地域で発生したEVD流行の原因となっている。5つの種の中でザイールエボラウイルスは最も強い病原性を示す。2014年に西アフリカで発生しているエボラウイルスについては、ギニアで発生した流行時のエボラウイルスの遺伝子情報から系統樹解析が行われている(Dudas and Rambaut, PLoS CURRENTS OUTBREAKS, May 2, 2014. 2014年頃に世界的な流行の兆しを見せ始め、一部地域ではwhoが緊急事態宣言をするなど、世界中が注目し、震撼したエボラウイルス病。 この非常に危険な感染症は今現在もなお、流行を繰り返している。 今回は、エボラウイルス病とはどういう病気なのか学んでいこう。 Phylogenetic analysis of Guinea 2014 EBOV ebolavirus outbreak)。それによると、このウイルスはアフリカ中央部のコンゴ民主共和国・コンゴ共和国・ガボンで発生した流行時に原因となったザイールエボラウイルスに分類されたが、異なるアフリカ中央部で発生したザイールエボラウイルスとは異なるグループ(クラスター)を形成することが明らかにされた。この結果は西アフリカで発生したEVD流行は、アフリカ中央部に由来するウイルスによる可能性、または、そもそも西アフリカに存在していたザイールエボラウイルスに分類されるウイルスによる可能性を示唆する。EVDの公衆衛生学上の重要な特徴は、致命率が高いこと、血液や体液との接触によりヒトからヒトへ感染すること、条件が整うと比較的大きな流行に発展することがあることである。そのため、EVDの流行は、しばしば注目を浴びてきた。2018年5月にコンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo:DRC)北西部の赤道州において同国9回目の集団発生があり、54例(死亡33例)が報告され7月に終息した。しかし、同年8月に北東部の北キブ州において同国10回目の新たな流行が発生し、2019年3月現在も続いており長期化している。なお、WHOは本流行の発生を受けて、2018年10月17日に国際保健規則(IHR)緊急委員会を開催したが、現時点では本流行は国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern:PHEIC)には該当しないと結論づけられた。一方で、WHOは引き続きEVD患者発生状況に対して懸念を示し、対応の強化や継続的な警戒が必要であることを指摘している。日本では国立感染症研究所村山庁舎にグローブボックス式BSL-4施設が1981年に設置され、BSL-3施設として使用されてきたが、平成27年8月からBSL-4施設として使用されている。世界的にはBSL-4施設は30カ所以上で設置されている。アフリカではガボン及び南アフリカ共和国にBSL-4施設がある。発症前のEVD感染者は感染源になることはほとんどない。EVD患者またはエボラウイルス感染動物の血液などの体液と直接接触した場合に感染する。ヒトへの感染の発端が、アフリカでは熱帯雨林の中で発見された、感染して発症または死亡した野生動物(チンパンジー、ゴリラ、オオコウモリ、サル、レイヨウ、ヤマアラシなど)をヒトが触れたことによると示唆される事例が報告されている。EVDを発症した患者の体液(血液、唾液、分泌物等)に、直接的接触することにより、またはそのような体液で汚染された環境への間接的接触で創傷のある皮膚や粘膜を介してヒト-ヒト感染が起こる。免疫応答や炎症反応などが起こりにくい、いわゆる免疫回避組織である、精巣、眼球内部、中枢神経系において、EVDの回復後にもウイルスが存在し続けることがある。発症3か月後の男性精液からRT-PCR法でエボラウイルスが検出された事例がある。EVD感染後の性行為は発症後12か月まで又はRT-PCR法で2回陰性の結果が得られるまで、コンドームを装着することが推奨されている。またEVD治療9か月後にエボラウイルスが原因で遅発性の急性脳髄膜炎を発症した症例も報告されている。EVD流行では地域で行われていた葬式の風習も(会葬者が遺体に直接触ること)、EVDの地域伝播に寄与する。接触感染予防対策が適切になされないこと、適切に実施できない環境にあることが、医療従事者のエボラウイルス感染リスクとなる。エボラウイルスに感染しないようにするためには、流行地域に行かない(そのための情報をあらかじめ収集する)、野生動物に直接触れない、その肉を生で食さないことが重要である。流行地では患者(感染者)の体液(排泄物を含む)や、患者が触れた可能性のある物品に触れないようにすることが重要である。(2019年03月27日改訂)エボラ出血熱はエボラウイルスによる感染症であり、ラッサ熱、マールブルグ病、クリミア・コンゴ出血熱等とともに、ウイルス性出血熱(viral hemorrhagic fever:VHF)に分類される一疾患である。エボラ出血熱患者が必ずしも出血症状を呈するわけではないことから、国際的にエボラ出血熱に代わってエボラウイルス病(Ebola virus disease: EVD)と呼称され...Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japanラッサ熱は西アフリカ一帯にみられる急性ウイルス感染症であり、いわゆるウイルス性出血熱4疾患の一つである。“ラッサ”とは1969年に最初の 患者が発生した村の名に由来する。ラッサウイルス(Lassa virus)はアレナウイルス科に属し、自然宿主は西アフリカ一帯に生息する野ネズミの一種であるマストミス(Mastomys natalensis) である。1967年8月西ドイツ(当時)のマールブルグ(Marburg )とフランクフルト、およびユーゴスラビアのベオグラードでポリオワクチン製造および実験用としてウガンダから輸入されたアフリカミドリザルの解剖を行っ たり、腎や血液に接触した研究職員、および片づけを行った人など合わせて25 名に突如熱性疾患が発生し、7名が死亡した。 エボラ出血熱は感染症法では「一類感染症(感染力、罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性が極めて高い感染症)」に定められている。このため診療体制が整えられた第一種感染症指定医療機関に入院し検査・治療を受けることになる。アウトブレイクが発生している場合には、渡航先、現地での行動に基づく疑い患者の定義(擬似症定義)が通達され、該当する人は決められた期間、毎日体温を測定し検疫所に報告しなければならない。発熱や症状が見られた場合には、報告を受けた検疫所が保健所に連絡し、第一種感染症指定医療機関へ擬似症患者を搬送する。 症状のある患者自身がエボラ出血熱を心配した場合、あるいは患者を診察した一般の医療機関がエボラ出血熱を疑った場合には保健所に連絡し対応について指示を仰ぐことが重要。 診断は血液や尿、咽頭を拭った液を国立感染症研究所へ運び、病原体の分離や遺伝子の検出、血液の抗体検査により行う。診断の時だけではなく、回復した後も同様の検査によって患者の体液中に感染性ウイルスが存在しないことを確認することが求められる。患者の退院のための大きな判断材料となるからだ。また、退院後も患者の家族や接触者に対する追跡調査が行われ、感染拡大防止に役立てている。有効なワクチンや治療薬がないため、予防に注力する。流行状況を調べ流行地には行かないこと、やむなく渡航する場合は感染が疑われる人間や死亡した人間、葬儀への参列、医療機関の受診などは極力避けることが必要。動物(霊長類、ヤマアラシ、宿主であるフルーツコウモリなど)からも感染するので、動物の死体に近づくことや接触、その肉を生で食べることも同様に避けたい。発症していない人間が他者に感染させることは、性行為など特別な場合を除いてほとんどないので、過剰な懸念を抱く必要はない。エボラ出血熱は、エボラウイルスによる感染症。致死率の高さが特徴で、20%から最大で90%に達することもあり、感染地域の住民に多大な恐怖を与えている。病気を起こすウイルスの亜属は5種知られており、種類によって致死率が異なるのが特徴だ。この感染症は、1976年に初めて現在の南スーダンとコンゴ民主共和国で同時に発生した。近年では2014年以降、西アフリカ(ギニア・シエラレオネ・リベリア)で感染が拡大し、アフリカ以外でもスペインやアメリカなどで発生が確認された。その後2015年5月にリベリア、11月にシエラレオネ、12月にギニアでエボラ出血熱の終息宣言が発表された。2018年7月コンゴ民主共和国北キブ州においてアウトブレイクが発生し、2019年9月時点も続いている。回復期のリハビリテーションに関する情報をご紹介する「回復期リハビリテーション.net」現在のところ、エボラウイルスに対する効果的なワクチンや有効な治療薬は確立していないので、治療は対処療法のみに限られる。下痢で脱水症状などを起こしている患者への点滴や、併発感染症を防ぐための抗菌剤、また、ビタミン剤や鎮痛剤、栄養治療食などを与えることで少しでも長く患者の小康状態を保ち、患者自身が免疫力をアップさせ回復をめざすのが治療の基本だ。患者の体内からエボラウイルスに対する抗体が検出されるようになると急速に病状は回復し、免疫も機能し始めるが、それが一生続くかどうかはまだ不明。なお、これまでにも数多くエボラウイルスの増殖を抑制するための抗ウイルス薬の開発が進められてきたが、現時点ではまだ一つもエボラウイルスに対して有効性が証明されたものはなく、一部の薬品を除いては臨床の段階にも達していないのが現状だ。1996年、宮崎医科大学卒業。宮崎医科大学寄生虫学教室、墨東病院感染症科、奈良県立医科大学病原体・感染防御医学/感染症センターにて基礎医学・臨床の両面から感染症に携わる。2016年4月より現職。日本内科学会総合内科専門医、日本感染症学会感染症専門医の資格を持つ。全国の病院・総合病院・大病院を独自取材をもとにご紹介する医療情報サイト「ホスピタルズ・ファイル」動物病院や獣医師を独自取材をもとにご紹介する動物病院情報サイト「動物病院ドクターズ・ファイル」看護師・歯科衛生士・受付スタッフなど医療従事者向け求人情報サイト「ドクターズ・ファイル ジョブズ」2~21日(通常は7~10日)の潜伏期を経て、感染の第一期では高熱、頭痛、筋肉痛、咽喉炎、全身の衰弱などが見られる。第二期では、嘔吐、下痢、発疹、多臓器不全が確認される。また、半数以下のケースでは吐血や血性の下痢、皮下出血など、複数の臓器で出血症状が見られることもある。加えて、肝機能や腎機能の低下も見られる。結膜が充血するなど目の症状が出た場合は、他の症状と合わせて検討されエボラ出血熱の早期診断に役立つ場合もある。なお、感染した経緯によって潜伏期間の長短にも違いが出る場合がある。汚染された注射器を通した感染は潜伏期間が短く、接触による感染は潜伏期間が比較的長くなる傾向にあるという。エボラウイルスの自然宿主は、オオコウモリ科のフルーツコウモリと考えられているが、宿主や感染動物(ゴリラ、チンパンジー、サル、ヤマアラシなど)の血液や分泌物、臓器、その他の体液などと人間が接触することにより、ウイルスは人間社会に持ち込まれる。その後、ウイルスに感染した人の血液や分泌液、体液、臓器、そしてこれらに汚染された物体(ベッドや衣類など)に皮膚の傷や粘膜を通して直接接触することで人から人に感染が拡大していく。他にも「葬儀で感染者の体に直接触る」、「感染予防対策を徹底せずに医療従事者が患者と濃厚接触する」などの行為も感染拡大の大きな要因となっている。また、性行為による感染リスクについては、現在も調査が進められているところだが、WHO(世界保健機構)は、エボラ出血熱からの回復者やそのパートナーに対し「性行為の一切を控える」ことや「回復者の精液が2度の検査で陰性になるまでは、一貫してコンドームを使用し安全な性生活を送る」ことなどを呼びかけている。
2014年に西アフリカで発生しているエボラウイルスについては、ギニアで発生した流行時のエボラウイルスの遺伝子情報から系統樹解析が行われている(Dudas and Rambaut, PLoS CURRENTS OUTBREAKS, May 2, 2014.