ジョゼ(じょぜ) 本名山村クミ子。足が悪く幼い頃から車椅子生活を送る。父親が再婚し、一時期は父親と再婚相手の女性と連れ子と四人で暮らしていたが、生理がはじまり車椅子が必要なジョゼの存在は鬱陶しがられ、施設に入れられる。十七歳で祖母に引き取られ、以来高齢の祖母と二人暮らし。高飛車な性格できつい物言いをする。恒夫(つねお) 貧乏な大学生。坂道から落とされたジョゼを助けたのがきっかけで、ちょくちょくジョゼと祖母の暮らす家を行き来するようになる。祖母(そぼ) 施設に … これ以降は、表題作と、特におすすめの3篇の見所をご紹介します。気になった作品が記事で紹介されていなかった場合は、ぜひご自身で読んでみてくださいね。まずは短編集『ジョゼと虎と魚たち』に収められた他8編すべてを簡単にご紹介しましょう。主人公の夫は、ふだんは愛想がいいものの、前妻の実家に行くときだけ、不機嫌になる人物。それは主人公に対する、嫌々行くのだというアピールなのでしょうが、共棲みの男女にとって、不機嫌は「ひとつきりしかない椅子」だと、主人公は考えています。特に独特の空気感が魅力的な短編なので、それがどう映画で表現されるのか、もしくは変化するのかに注目して見てみるのがいいでしょう。主人公と大庭の鷹揚なセリフとのコントラストも見事で、まさに短編を読む面白さ、楽しさを教えてくれる一作といえます。2人は、恒夫がまだ大学生だったとき、ジョゼの大ピンチを彼が救ったことで知り合いました。17歳のときから父方の祖母に引き取られたジョゼにとって、恒夫だけが外の風を運んでくる存在でした。その祖母も亡くなり、彼らは急接近。「共棲み」を始めます。「どっちか先にそこへ座ってしまったら、後は立っていなければならない椅子とり遊び」なのだと。では、その生き方や考え方とは何か。作者は、短い文字数の中に彼女の独特な価値観を凝縮して見せてくれます。また、2003年に妻夫木聡と池脇千鶴で実写映画化され、一気に有名になった作品でもあります。映画だけ見た事のある人も多いのではないでしょうか。どちらも絶妙な空気感に引き込まれる名作ですが、ストーリーの始まりと終わりがまったく異なるので、ある意味別物ともいえるかもしれません。言い得て妙ですね。男と女という、「異なる種類の生き物」が暮らすうえでの極意のような言葉が、主人公の独白などを通じて、自然に散りばめられていて、ところどころではっとさせられます。ジョゼは25歳。いちまさん(おかっぱ頭が可愛い京人形)のような女性です。下肢に麻痺があるため、車いすがないと動くこともままなりません。男女関係ならではの、2人だけにしか分からない関係性のバランスがあります。主人公の梨枝は、稔を甘やかしているように見えますが、男に対する観察眼は鋭く、一線を引くところはきちんと引いているのです。その違いが、ストーリーの印象をガラッと変えています。原作は幸せな様子にフォーカスされていますが、映画は苦い部分が巧みに織り込まれた内容です。結婚や転職で辞めていく若い職員とは違い、いつもそこにいて安心感を店の者にも客にも与える主人公の、地味な事務員ぶりを描いた10行ほどの描写……。やはり、女磨きや結婚観に触れたわずか7、8行の描写……。なかでも、情けなくておかしいのが「いけどられて」の稔です。優柔不断で迷いが多い性格を、主人公の梨枝にすっかり見透かされています。ジョゼの本名は山村クミ子。大好きなフランソワーズ・サガンの小説にジョゼというヒロインが出てくるので、恒夫にそう呼ばせています。ジョゼは機嫌がいいと恒夫を「管理人」と呼び、恒夫もそう呼ばれてまんざらではありません。また、これ以外の作品も、いずれもさまざまな仕事をもった大人の女性の恋愛が描かれます。 出会いから外の世界へ飛び出す流れは映画と同じく原作から変更があるよう。しかしアニメということで、より世界観の色付けの自由度が高まるので、また異なる魅力があるでしょう。この名作にどのような解釈を新たに加えたのかに注目してみてください。さて、この短編集には「共棲み(ともずみ)」という作者独特といえる言葉が使われています。表題作にも出てきましたね。そんな男と女の駆け引きが一作一作ていねいに描かれている、本編。年上女と年下男という設定は似ていても、ひとつとして同じものがなく、この短編集を楽しめるゆえんでしょう。また、映像化はこれだけでなく、2020年夏にはアニメ映画化(監督タムラコータロー)もされます。公式サイトに「ある晩、ジョゼは恒夫と出会い、意を決して彼とともに外の世界へ飛び出すことに決める」とあります。タイトルにある「虎」。ジョゼを外に連れ出そうとする恒夫に、動物園で虎を見たいと言うジョゼ。なぜ虎なのか、その理由が可愛らしいので、ぜひご注目ください。この後から、その魅力をさらに詳しく紹介していきます! もちろん登場人物たちの丁々発止の会話は漫才のように楽しく田辺文学の大きな魅力です。本作でも、全編飛び交う関西弁が、恋愛話をべたつかせず、絶妙なスパイスになっています。ただ、それは魅力の一面です。ここからは、表題作以外の短編を3つご紹介します。最も有名な作品だけしか知らないというのはもったいない短編集ですので、その魅力が伝われば幸いです。高飛車なジョゼと、その裏にある本当の気持ちをしっかり受け止めている、心優しい恒夫。2人の言葉のやり取りと行動が全編を通して面白く、心があたたかくなります。本短編集の他作品とはやや異なる、ファンタジーのようなふたりの関係性が胸にしみます。幸福とは何なのか、振り返るきっかけをくれる作品です。表題作をはじめ、ここに収められた9本の短編小説には、男と女の駆け引きや別れが、生き生きと気張らずに描かれているのです。主人公の女性たちは、年齢も立場もそれぞれ異なるものの、男性に対する優しさとともに、鋭い洞察力や批評眼を併せもっています。女のこわさ、すごさに何度もうならされるでしょう。 最も有名なのは表題作の、足の不自由な女性と健常者の青年を描いた恋愛小説でしょう。車椅子がないと自由に動けないジョゼ(本名山村クミ子)と、彼女が「管理人」と呼ぶ年下の青年・恒夫との、出会いと同棲生活を描いた名作です。ふたりの不思議な関係性に、生きる意味を考えさせられます。「田辺聖子の小説」というと、いくつか読んだことのある人だと、関西弁が飛び交うユーモア小説のイメージがあるという方が多いのではないでしょうか。若い女性を身ごもらせてしまい、主人公と別れてその女性と暮らすことになるのですが、何を考えているのか、別れの日に「僕に梨枝と別れる勇気あるんかなあ」と言い出します。しかも相手の女の所に行く車中で食べる弁当を梨枝につくってもらったり、挙句にその弁当を一緒に食べてから出かけようなどと言い出す始末。本作の主人公えり子は、共棲みのルールとして、2人とも不機嫌になることはできないと考えています。男女関係の機微を描いた短編が詰め込まれている本作。どちらかというと大学生以上を対象にしたような大人向けの作品ですが、アニメ映画になるということで、より対象者が広くなるでしょう。そして「魚」。籍も入れていないものの、新婚旅行をしている2人。魚は、その先で訪れた水族館と関係があります。ジョゼは水族館の魚たちを見て、完全無欠な幸せについて考えを巡らせます。「共棲(きょうせい)」には、一緒に生きるだけでなく、異なる種類の生き物が、相手の足りない点を補って生活するという意味があります。作者の「共棲み」も「異なる種類の生き物」が念頭におかれているようです。短編小説の魅力のひとつに、短い文章の中で手際よく主人公の生き方なり出来事なりをまとめる描写力があります。ややとうが立った主人公の女性と、年下男の関係という構図が多い短編集『ジョゼと虎と魚たち』ですが、最後に描かれるのは、46歳の独身事務員が5歳上の男と重ねる逢瀬です。本作をはじめ、この短編集は、生き方の学びとなる名言集ともいえるでしょう。ジョゼは、2歳年下の恒夫と海の見える九州の島へ新婚旅行に向かっています。この短編集に登場する主人公の女性たちは、年齢も職業もみなばらばらですが、自分自身の生き方をしっかり持っています。そのためパートナーの男性のほうが頼りなく見えたりもします。ジョゼはなぜ恒夫を管理人と呼ぶのか。ジョゼが共棲みをはじめて、手に入れたものは何なのか。 恒夫(妻夫木聡)は、雀荘でアルバイトをしている大学生。最近、卓上で話題になっているのは近所に出没する婆さんのこと。婆さんはいつも乳母車を押して歩いている。アニメでは趣味の絵と本、想像の中で自分の世界を生きるジョゼが、夢を追いかける大学生・恒夫との出会いをきっかけに外の世界へ飛び出すことを決めるというストーリーを展開。ジョゼ虎、昔読んだ印象だと、途中まではわりとちゃんと純愛なんだけど、結末はジョゼと一緒にいることに恋人の方が疲れて将来的に別れるんだろうな、みたいなことを匂わせていた気がするんだけど、記憶違いか…??タムラは原作について「どんなに時が経っても多くの人の心を捉えて離さない不思議な魅力があります」と語ったうえで、「新しい時代を迎えた今だからこそ映像化を通して再度スポットライトが当てられれば幸いです」と述べる。恒夫はある日、偶然乳母車に乗っているその少女に会った。それが、ジョゼ(池脇千鶴)との出逢いだった。短編小説「ジョゼと虎と魚たち」に基づく劇場アニメーション映画が2020年に公開されることが3日、明らかになった。原作は2003年に妻夫木聡と池脇千鶴の共演により実写映画化されている。1985年に刊行された同名の短編集に収録されている「ジョゼと虎と魚たち」は、足が不自由な読書好きの女性・ジョゼ、ジョゼがひょんなことから出会った青年・恒夫の恋を描く物語。2003年には妻夫木聡・池脇千鶴主演で実写映画化されている。